はてなブログとはてなダイアリー

この文章は、はてなブログチームの社内ブログに書こうと思っていたんだけど、みんな忙しそうだし、目の前の課題や継続的デリバリーといっさいかかわりの無い話なので、水を差したらいけないと思い、書きあぐねていた。このままだと書かずに消えてしまいそうだし、ぼんやりと考えていたことで、思いつきでしかないから、ここに書こう。

はてなブログとはてなダイアリーについて書く前に、一冊の本を紹介したい。丸谷才一の『文学のレッスン』という本。簡単に読める本で、すばらしい本だ。ぼくは今、オレンジジュースを飲みながら書いているんだけど、飛行機に乗るといつも、オレンジジュースを飲むことにしている。快適なんだけど、なんとなく不安なときに飲む。この本は、飛行機の座席でいつも注文するオレンジジュースのような本だ。二十五才の自分に一冊、手渡せるとしたら、この本を選ぶ。二〇一〇年の出版だから、不可能だけれど。

文学のレッスン

文学のレッスン

このように、Amazon商品も簡単に貼れます。『文学のレッスン』は、文字通り、文学のレッスンが書いてある訳だが、特徴的なのは、文学のジャンルごとに章立てされている事である。コンセプトがいい。目次を書き出してみると、判り易い。

【短編小説】もしも雑誌がなかったら 9
【長編小説】どこからきてどこへゆくのか 37
【伝記・自伝】伝記はなぜイギリスで繁栄したか 75
【歴史】物語を読むように歴史を読む 107
【批評】学問とエッセイの重なるところ 145
【エッセイ】定義に挑戦するもの 183
【戯曲】芝居には色気が大事だ 215
【詩】詩は酒の肴になる 245

このように、引用もさくっと出来ます。文章を書くとき、これから自分が書こうとしている文章が、どんなジャンルのものなのか、予め知っているのは大事ではないか。音楽でも同じであろう。ジャンルによって奏でる楽器も違えば、譜面も違う。ジャズをやりたいのに凡そジャズには似つかわしくない楽器を選んだとしたら、どうだろう(もちろん世の中にはとくべつな才人がいて、どの楽器を手に取ってもジャズのように奏でられるんでしょうけれど)。小説を書くなら、小説がどんなものかを知らなくてはいけない。意味不明な言葉の羅列を調子良く書いてしまって、それは詩なのだと理解できたら安心する。職業的な物書きだったら、話はもっと明快で、エッセイの注文を受けたのに戯曲を書いて渡したら、載せてもらえない(よくある話ではないか)。

文章には、ジャンルがある。これは知っておいて損は無い。ここで、<はてなブログ>と<はてなダイアリー>を見てみよう。<ブログ>と<ダイアリー>を見比べてみる。すると、或る事に気がつく。<ブログ>とはなんだろうか。<ブログ>は一般的には、Webアプリケーションである。道具である。鉛筆と同じで、書くためのツールであり、じっさいに<はてなブログ>のアイコンには万年筆があしらわれている。一方で、<ダイアリー>はどうだろう。日記は立派な文学の一形式であろう。よく知らないけど。そんな風に学んだ気がする。要するに<ブログ>は書くための道具を指し、<ダイアリー>は書かれたコンテンツの性質を表している。だから、

初めて<はてなダイアリー>に触れる人はこんな風に考える、

このブログは、はてなダイアリーっていうくらいだから・・・

なにを書けばいいのか判り易いのだ。

ダイアリーなんだから、日記を書こっと!

ところが、<はてなブログ>だとこうはいかない。

よーし、ブログでもやろっと

なにを書いたらいいか判らない。

ブログ? ブログってなにを書けば!

と、なります。引用記法が愉しいだけ、みたいになってますが、ぼくは、<はてなダイアリー>の方が親切だから<はてなブログ>なんて要らない、と言いたいのだろうか。そうではない。<はてなダイアリー>よりも<はてなブログ>のほうが新しい、と言いたいのだ。Webアプリケーション的な意味では無い。モダンな設計とかはかかわりが無い。そうじゃなくて、『文学のレッスン』的な意味で新しい。<ブログ>も文学の一形式だと考えている。<ブログ>と<ダイアリー>はどちらも文章のジャンルだと思っている。<ブログ>なるジャンルは新しいから、未だ研究が進んでいないだけ。丸谷才一が二〇二〇年まで生きていたら、<ブログ>の章を書き加えたとしても不自然ではない。喩えば、

【ブログ】Googleにキャッシュされるもの 273

これはいまいちか。

ブログという道具が無ければ書かれなかった文章が幾つも書かれている。それが文学的にどんな意義を持つのか、ぼくは知りたいと思う。だれかにレッスンして欲しいと思う。この、ひねくれていて新しい問いに輪郭を与えてくれるのは、はてなブログやはてな匿名ダイアリーに書き綴っている、おもしろい人たちなんじゃないかと、密かに期待している。