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落語とハウスを交換

江田くんの一〇周年の書き物が、予想外にたいへんで、未だ仕上がってないんだよ。仕上がったんだけど、仕上がらせないよ、みたいな空気があって、仕上がらないんだ。おかしくない。〆切りも文字数も伸びるんだ。反則じゃない。ずっとやってるような感じがするけど、たいして書いてないんだよ。想い出してる時間が長いだけで。別にいいんだけど。という訳で、江田くんの本で使わない江田くんの話を書きます。

一〇年前、江田くんが、御母さんに落語がいっぱい入ったiPodをプレゼントしたいというから、ぼくがセレクトして入れてあげたよ。といっても、江田くんの御母さんは小三治に目がないから、小三治だけでいいと云われていたのに、若気のいたりで、ぼくの好きな落語家も一つ入れた。小三治だけを聞きたい人に、時々小三治以外が交ざるから、余計な事をしたな、と後になって反省し、気になっていた。ところが昨秋になって、なんと江田くんの御母さんから、「あのiPodに入れてもらった、小三治じゃない落語家が気に入っているから、もっと聞きたい」と注文があったんだよ!

八代目三笑亭可楽という落語家なんだけど。別に知らなくていいよ。ぼくはうれしくて、小三治以外を一つ入れたのも、どうやら邪魔じゃなかったという事だし、渋いのに、気に入ってくれるなんて有り難い。江田くんの御母さんは、一〇年間聞いてはいたけど、名前が判らなかったんだって。なぜかというと、iPodシャッフルに入れたから、アーティスト名が表示されないんだよ。名前が判らないのに気に入ってくれるなんて、最高でしょう。ということで、今回は、八代目可楽の音源だけをデリバリーした。コツコツ収集していたNHKのアーカイブ全部送ったった。

したら、江田くんから御返しに、djmixが1.9ギガバイトくらい送られてきた。落語とハウスをディールしたんだよ。こいつが、粒揃いでねえ。一つ一つ噛みしめるような味があるんだよ。いろいろあるんだけど。いちばん凄いのは、石黒くんの<ビンセントラジオ31>かもしれない。こんなモダンなR&Bが聞けるとは思わなかった。甘いし悪いし、長いし。余裕たっぷりだし。本当に石黒くんは凄い。石黒くんの<ビンセントラジオ31>が暴力的に甘い。シロップなんだけど、全部舗道にこぼれてるみたいな。側溝に流れてる咳止めシロップみたいな。ぼく単純だからさー。40:25くらいでいつも泣いちゃうんだよ。

だけど、最近いつも聞いてるのが、Dj spearchucker。だれ?って感じ。名前がへんてこでしょう。Dj spearchuckerの<blouse and skirt mix>がいいんだよ(きょうはPart2聞いてる)。テクノなんだけど。一言でいえば、地味。眠くなる。暗いし。だけど、心は塞いでないっていうか。日曜日の昼下がりに、陽当たりのいい部屋で録音し始めたのに、真夜中の音になってたみたいな。静かで、集中している。作業用に丁度いいと思って聞いていたら、いつのまにか、やめられなくなった。なんていうのかな。一人ぼっちで居るときに、一人だけ愉しいみたいな。スピアーチャッカーが、じつは一人でノリノリだった、という気分が判って来ると、疾走感すら感じるのだが、やっぱり地味だった。上がり切らないようでいて、はかどってる感覚はふつうにある。ぼくにとっては、序盤からピーク感すらある。なんか今、これがいいよ。落語でいうなら、八代目可楽っぽいよ。