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最近よんだKindle本 あれ?

「やりがいのある仕事」という幻想

「やりがいのある仕事」という幻想

森博嗣の小説は一つもよんだ事がないですが、エッセイは好きで、新書は何冊もよんでいる。レビューを見ていると、そういう読者もいるようだ。<仕事>について、いつものように個人主義的な態度が語られる。静かで力づよい。かくありたい。作者の小説がどんなものか知らないが、小説の作者が、小説とはちがう言葉で語ってくれている、という喜びが、この種の本にはあるのではないか。新書というと、実用的な用途ももちろんあるけれど、贅沢な副産物、というか、本業が別にある人が、ちょっと楽しみながら自分の考えを披瀝している、みたいな本も多い。ぼくにとっては、そういう新書がうれしい。

森博嗣の道具箱 The Spirits of Tools (中公文庫)

森博嗣の道具箱 The Spirits of Tools (中公文庫)

という訳で、これもよんだ。森博嗣といえば工作の話。懐かしい道具や工作物を紹介しながら、少し教訓のある話になったか、ならないか風の短いエッセイがつづく。静かに暮らしているエンジニアの優しい日常。理系と文系の感性がなめらかに繋がっている。だからIT企業のエンジニアのデスクには、時々森博嗣の本が置いてあるのではないかな。

高級な道具を手にして気づくことは、どこかに無駄がある、という点だろう。洗練されたものには一点の無駄もない、というイメージを抱くかもしれないが、実はそうではない。「最高級」とは、これ以上に無駄がない合理化の頂点よりも、一歩上に位置するものであって、そのただ一歩に、人間、職人、伝統、歴史、そして未来を見据えた「遊び」のデザインが注がれている。

新装版 ほぼ日の就職論。「はたらきたい。」 (ほぼ日ブックス)

新装版 ほぼ日の就職論。「はたらきたい。」 (ほぼ日ブックス)

<今までなにを大切にしてきたか>が、<はたらくこと>についての答えになるという。これ大事な言葉だから、普通に忘れないようにしなくちゃ。就職活動をしている大学生へ向けられた本だけど、今の自分にとって良かった。途中、フリーの働き方について知人が対談に参加している章があり、なぜか少しハラハラしながらよんだ。しりあがり寿の章が良かったかな。三十六才までサントリーに在籍していたとのこと。会社は生態系である、とのこと。ほんとうに。終盤のアフォリズムはだれだって感動してしまう。

寿  ……何て言うか、会社って、ひとつの生態系みたいなところがありますよね。こっちの人が吐いた息を、あっちの人が吸ってる、みたいな影響が常にあって。
糸井 うんうん。
寿  それは、今の自分の会社でもそうで。うまくいってるなと思っていても、一人が辞めるとガタガタになったりとか。
糸井 「ちょうどいい」って、ないんですよね。
寿  「ちょうどいい」はないですよね。会社を計るメーターのなかに「ちょうどいい」っていう目盛りがあるとしたら、一瞬だけ針がそこに来て、また通り過ぎるみたいな。
糸井 そうそうそう。ふらふら行ったり来たりするんだよね。だから、針が「ちょうどいい」の近辺でふらふら往復してるくらいのところが、組織としては理想ですよね

不格好経営

不格好経営

おくればせながらよみました。いやーやばい。なにがやばいって創業当時の川田さんのめちゃくちゃ楽しそうな写真がやばい。最初に<多くのゴーストライターの申し出をきっぱり断り>と書いてあるのも良い。南場さん、三十六才で起業。ぼくはインターネット業界にいるから、この本は当事者としてよんでいいんだ、という思いが、よんでいる間ずっと湧いていた。大袈裟にいえば自分の話なのだ、と思いながらよんでいた。当たり前かもしれないが、しかし、私は、自分がインターネットでメディアの仕事をしている事が、未だに不思議なくらいにへぼい男なのである。未だにふわふわしている。だから、人生と仕事についての本を今頃よんでいる。不格好経営、ボードメンバーが小説家の修行の為に辞めてしまい、戻って来るエピソードが何度か触れられていた。爽やかな本。

起業家

起業家

サイバーエージェントの藤田さん、お見掛けした事もないけど大好きで、ミクシィが渋谷マークシティにある時は上の階にサイバーがあり、不格好経営以上に他人事ではないかんじで、もう、もう最高。プロローグから歌っている。

 不安と焦りで眠れない夜もあった。
 責任の大きさに気づかされて、プレッシャーに押しつぶされそうになった。

 金のためにやっている訳ではないのに、金を批判され。名声名誉のためでもないのに、陰口を叩かれて。前に進もうとするととられるあげ足。成功するたびに増えていく妬みや嫉妬。少しの本当を混ぜながら嘘をつかれたり、全くの出鱈目の噂話も、今ではもう慣れました。
 今だから笑える話も、当時はただもどかしくて、悔しくて、見返したくて、いつか全員黙らせたくて。

 サイバーエージェント今日で10年。

ILL BOSSTINOのラップも引用されているぜ。アメーバ事業の陣頭指揮を取るにあたり目標未達なら社長を辞める、と宣言したそう。営業のサイバーエージェントが開発力を高める重要性を痛感する。どこのITベンチャーにも通ずるものがある。とか、考える。週末にも仕事のことを考えたいからよむのかもしれない。土曜日の頭の中にぐるぐるしている仕事のアイディアを、さらに高揚させるのに、こういう本がうってつけなのかもね。

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体 (宣伝会議)

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体 (宣伝会議)

この本は、上の二冊以上に近いというか、あすから田端信太郎さんのチームに合流したいくらい、やっていることと考えていることが同じ。同じプロジェクトの人と企画会議をしているような気分になる本で、ぼくはこれを会社帰りに半蔵門線でよんだんだけど、普通にリリースすべき施策を二つくらい思いついた。ビジネス書としては至上の効用ではないか。明晰な分析や言葉にする力は、ほんとうに凄いと思うが、それ以上に<環境が変化していること>それ自体への高揚や情熱が伝わってくるのが素晴らしい。あと、<メディアの話をするのがとにかく好き>というのが全面的に伝わってくるのが素晴らしい。

定量的なスペック競争でナンバーワンであることと、ブランドであることは、やはり何かが違うはずなのです。そして、ブランドがブランドたり得るためには、消費者が作り手に対して、底の見えない深い井戸を覗きこむように、得体のしれない尊敬や信頼を感じることが理想的です。

かつて雑誌の古き良き時代に一時代を作った良い雑誌とは、私が思うに、その中に100ページ分の記事があるとすれば、本当に面白く読めるのは20〜30ページ、そして時間があれば読むというくらいの記事が40〜50ページで、最後まで「何が面白いのか良くわからない記事」というのが20〜30ページくらい含まれているものでした。そして、今にして思えば、不思議なことですらあるのですが、その最後の難しくて何だか良くわからないような記事ですら、「きっとこの雑誌に載っているからには、自分にとって価値のあることが書かれているに違いない」「そういう記事を作り上げられる編集者は、自分の理解の範疇を超えた存在であって、凄い人達なのだ」という感情が湧いたものでした。

考える生き方

考える生き方

おくればせながら、こちらもよみました。極東ブログさんのはてなダイアリーはずっとよんでいて、今もごくたまによみ返すエントリーが幾つかあり、三〇代以降の生き方については助言を与えてもらったのだ。はてな社員としてこの本を拝読したことを報告できるのが本当にうれしいし、尊敬している。だからこそ、最初、本当に凡庸であることに戸惑った。人生が凡庸であるのはいいとして、書き方が凡庸、というよりも、凡庸たろうとして書いているテンションが少し前面に出ているように思った。上手く書こうとしてないよ、というのが分かりやすかった。この点、ブログの作者が本を書く時の気分のようなものがあるのかもしれない。自分はfinalventさんの見事な口跡、文章のフローを本に期待していたのかもしれないが、じゃあ、ブログではどうか、といわれると、絢爛豪華な文体ではないのだろうけれど、色っぽさ、味わいはあると思う。そういう文章のエキスを絞ったような本を、勝手に期待していたけれど、もっと気安い、肩の力の抜けた本だった。
絶望の国の幸福な若者たち

絶望の国の幸福な若者たち

この本も予想と少し違うものだった。もう少し論考が書いてあるのか、或いは江藤淳的な自分史と時代が語られる、しっとりした本なのかと想像していた。批評というよりは、リサーチの本で、作者の気分は軽妙だった。博報堂生活研究所とかのマーケティング資料を見ているような気分に近い。それはそれで良い。目を通しておいて良かった。
生き方

生き方

道をひらく

道をひらく

この二冊をなぜダウンロードしようと思ったのか、よく似ている本で、たいへんおどろかされた本である。なににおどろかされたかというと、<ちゃんとしよう>というメッセージが全編に渡って書かれていること。不真面目な本ばかりよんで来たので、真面目なことが感動的であった。悪いことや、やってはいけないことについて書いてある本から人生にアプローチして来たので、校長先生の話をちゃんと聞いてみたら、意外に良かった、みたいな驚きがある。すごいのが、いずれも、<正しい事はなんなのか、それは、自分に聞いてみれば簡単に分かる>と述べていること。たしかに、その通りだと思う。良識は自明である、というのは、スケールが大きいと感じた。引用は、松下幸之助。

別にむつかしいことをいうつもりはない。またいっても詮ないことだと考えてもいない。こんなことは結局、人の良識に訴えるのが根本で、だから何度も何度もあきずにいいたいのである

真面目な本からKindle化してるんじゃないの?という、不真面目な考えも浮かびました。

これ、新幹線の車内でついダウンロードしてしまった。ぜったいくだらないし後悔すると思いながらも落としてしまった。二〇才年下の美女と二〇年セフレで、六〇才すぎてから結婚するっていう。おつかれ。こうして並べてみると、まさに三十五才のビジネスパーソンが間違えて買ってしまった本というかんじで、ほんとうに凹むよ。
社長失格

社長失格

こちらは、不格好経営で紹介されていたから、よんでみた。おもしろい。やっぱり借金が嵩んでいるのはよく無いのだなーと思った。売上がないのに投資が先行している状態というのは、怖い。注意していてもやっぱり怖い。この本ではプロバイダーの無料接続の事業が描かれる訳ですが、たかだか一〇年前の話なのに通信の状況はまったく違う。まったく違う状況の中で、同じ事が繰り返されているのだと思った。不格好経営と同じように、この本も他人事ではない。夏野さんの名前がよく出て来た。破産へと追いつめられていく内で、恋人の母親にもお金を渡していた、など私生活がちゃんと書いてあるのも、おもしろい。ここにチャールズ・ディケンズを貼れば、同じテーマでももう少し恰好がついたかもしれないが、今はこういう生々しいビジネス書が気分なんだよ。あれ?
シリコンバレー流 世界最先端の働き方 (中経出版)

シリコンバレー流 世界最先端の働き方 (中経出版)

あれ、なんだか今までの自分の読書と傾向がまったく変わっていて、そういう時期なのかな、と割り切っていたんだけど、こうして眺めると軽薄かなあ(笑)。ちゃんとした本よみなよ、と笑われそうだけれど、この本も良かったよ。いわゆるベンチャースピリットって、ぼくたちの間ではなんとなく共有されているけれど、シリコンバレーの言葉で改めて教えてくれる本。その点で、稲盛和夫と松下幸之助の本に似ている。あらかじめ知っていることを言葉にして、励ましてくれる本。自己啓発書ってそんなものなのかしら。