橋本治の恋愛論

今年買ってよかったもの、というブログ記事がそろそろ目につく時候ですが、ぼくにとっては、この本なのかな。よくもあり、わるくもあり、みたいな。この本が届いてから自分なりに消化するまで(二ヶ月くらい)とにかく、つかれた。嵐のような本だ。

恋愛論 完全版 (文庫ぎんが堂)

恋愛論 完全版 (文庫ぎんが堂)

語り下ろしの本だから、語りの力に巻き込まれる、声が聞こえる本である、というのもあるんだけど、やはり、恋愛というものへの洞察と表現力が凄まじい。橋本治の本は読んだことがなかったんだけど、魅了された。東京大学の卒業論文が鶴屋南北、ということだけは知っていて、かっこいいなー、と思っていた。この本を知ってから、七冊くらい手に入れた。読書については、二〇一四は橋本治の年だったかもしれない。

恋愛っていうのは周囲に暗黒がある。

この一行で、橋本治の「恋愛論」のまがまがしさを伝えるには十分だと思うけど、ぼくは影響されやすいので、おばかさんなので、この本を読んでいる内、じぶんが恋愛の内にいると思い込んでしまったのね。というか、じっさい恋愛感情があった気もするのね。という、この書き方が、もう橋本治っぽくなって来ていて、危ないんです。性的なエナジーとロジックが、歓びいさんで追い駆けっこをはじめる。へとへとにつかれる。

もうこの本、ポチりたくなってる人いるかもしれないけど、女子はいいけど、男子は警戒した方がいいよ。理由は二つあり、一つは、読めば分かるんだが、橋本治の「恋愛論」の中心にあるのは、ゲイの恋愛だということ。やっぱりホモじゃないか、って話。もう一つは、女子はいいんだけど、男子が恋に溺れているのは、ダサいと思う。ふつうにかんがえて。まー、ぼくもギリギリで回避したんだけど(笑)

もう一つ、ぼくが感じたのは、究極の恋愛は、文楽の心中物にあるな、ということ。恋愛とは、文楽の道行(みちゆき)そのもので、あの形しかとりえない、ということ。北野武に〈ドールズ〉という映画があるけど。だから、もし男子が恋愛するなら、潔く死ぬことだね。歌舞伎で観ると分かりやすいけど、恋愛している男子というのは、歌舞伎の世界では、弱々しくて色気のある人、というように描かれる。

やれやれ、これだけの文章へ落ち着くのに、それなりの時間がかかったよ。finalventさんなんて、この本のまがまがしさを咀嚼するプロセスとして、悲観的な没原稿まで晒しているからね。左の文章と、かれのcakesの書評は、いくども読み返した。そうそう、恋愛について考えていると、恋愛についての言葉が、集まってくるんだよ。B&Bの句会で、ある人が詠んだ、〈ふぃくしょんと言えばそれまで秋の昼〉には、射抜かれた。