子規ぽよ 10〈虎〉

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虎といふ仇名の猫ぞ恋の邪魔

とらというあだなのねこぞこいのじゃま

文楽の「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」に虎がでていた。さすがに俳句に「虎」はないかと思って検索してみたら、けっこうでてきた。これはその中でも戯画っぽい、おもしろいもの。季語はどれ、と思いますが「猫の恋」みたい。交尾したくて奇声をあげる猫は、春の季題。〈ハロー風景〉にも書きました。虎と猫が並ぶのがおもしろい。

大磯のはれてをかしや虎が雨

おおいそのはれておかしやとらがあめ

「大磯の虎」を知らないと、何のことか分からない。そういう名前の遊女がいて、十郎の恋人なんだよ。「十郎」といっても知らないよね。十郎と五郎がいるんだ。「曽我兄弟」といっても知らないよね。もー。半年くらい歌舞伎を観てれば、一回は「対面」が掛かるから、このくらいのコンテクストは、すぐ学べるんだけど。やれやれですよ、兎角この世は「大磯の虎」も知らない人が、偉そうに語ってくれるんだから。そういう人をからかう俳句なのかもね。ボーカロイドで「千本桜」が流行ったし、十郎五郎も来るかもね。

短夜や虎叱りたる虎遣ひ

みじかよやとらしかりたるとらつかい

これおもしろいね。虎、当たりだったね。「短夜」は夏の夜だから、うだる夜、虎使いが虎を叱ってるっていう。滑稽だし、哀れだし。仲良くしてね。

檻狭し虎の尾をふる春の風

おりせましとらのおをふるはるのかぜ

これもよくない。春風の吹く動物園。狭い檻で、虎がいらついてるのかな。うーん、いいなあ。「虎」というユニークな題材で、子規らしい自由な配合が生きた。この四句を見せられたら、まちがいなく会ってみたいと思わせる。この調子でいこうよ。


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illust. Satoshi Murata